第40話

住宅街の半闇の中に溶け込んでいく叔父の後ろ姿。母と一緒に見送っていると、携帯メールが着信した。今では大親友となったU子からだった。彼女は引き続きバトル遊園の衣服部の事務担当だった。そして退職した会社からの情報源でもあった。

「かえって入園者増えたわよ! 記念撮影に来るヒトなんかもいたりして・・・」

ともかく健全なテーマパークとは真逆の遊園地。それならではの社会現象だろう。なにしろ、バトルジェットの建物は幽霊屋敷へ改造されことになり、さっそく工事が始まった、とまでデマが飛んでいる。何でもありだ。

「サンキュー! じゃ、こんどの日曜、おめかししてきてネ!」と私はU子へ返信をした。

あ、申し訳ない。後先が逆になってしまった・・・

実は先月、U子の従業員用の無料パスポート券を使って、彼女と二人でバトル花火を見ることなり、通用門の前で合流した。その時、ばったりK君と会い、彼をU子へ紹介したところ彼女が一目惚れしてしまったのだ。危機管理の勉強があまりにも奥深く、今のところそうした相手がいない私は、叔父の息子、つまり私の従兄弟へ頼み込み、来週、ダブルデートの体裁を取ることになったのである。

あっ! デートと言えば、もっと大切な事を話し忘れていた。また後先が交錯してしまうが、最後に是非!

一年前。任務を終えた翌週、私は大学病院へA子さんのお見舞いに行った。

手術は成功し経過は極めて順調と聞いていたので、足取りも軽く病院新館の広いロビーへ飛び込むと、A子さんの教育係であった臨職の彼とすれ違った。

特大の花束で顔がほとんど隠れた私に、彼のほうは気づかなかった。声を掛けようと思ったが、その表情を見た瞬間、やめることにした。なぜなら、とても幸せそうに見えたから・・・ 病室へ入り初めて元気なA子さんに会った時、この私の感じ方に誤りがないことを確信した。

そして、今日。ご両親からの手紙。

現在は公共団体の正職員として働く彼が結婚のお相手、と書いてあった。きっと、入院中のお見舞いと退院後のお付き合いで、愛が育まれたのだ。

おめでとう、A子さん。ほんとうにおめでとう!

The end

小説中の事件は全くのフィクションであり、登場する人物は実在しない。しかし、現実世界において似たような悲劇が起きる可能性は、僅かながらも常にあろう。蒔苗昌彦

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