セクション5 ヒューマンエラー・概論 -1『概念論』コース000002

セクション5
「『準ヒューマンエラー』という分類名称の提唱」


5-1「狭間のケースをヒューマンエラー扱いしないことへの抵抗感」

ケースAの「悪意のある過ち」は、誰もが悪質な犯罪と捉えることができ、それをヒューマンエラーとして扱うことはないだろう。予防対策や再発防止対策が異なることも、誰もが理解してくれるだろう。

しかし、
ケースBは「他人事という意識が原因の過ち」
ケースCは「面倒臭ささが原因の過ち」
ケースDは「過労による気力喪失が原因の過ち」
ケースEは「忙しさが原因の過ち」
ケースFは「能力不足が原因の過ち」
ケースGは「知識不足が原因の過ち」
等もヒューマンエラーではないと断じれば、前述のヒューマンエラーの定義(危ないと分かっていながらも、つい犯してしまう過ち、うっかり犯してしまう過ち)に納得できた人でも、抵抗感を持つかもしれない。

また、事故調査において当人へ理由を尋ねると、BCDEFGでも「つい」「うっかり」という言葉が返ってくる場合が、結構あるだろう。

しかし、それでも私は、BCDEFGのようなケースは、ヒューマンエラーと悪意のある過ちの狭間に位置させるべきと考える。※1
なぜならば、これらBCDEFGは、たとえ事故を起こした当人による説明にて「つい」「うっかり」という言葉が使われようとも※2、特性はあまりにも多種多様で、原因も多種多様、それに伴い対策も多種多様で、私が定義するところのヒューマンエラーのように焦点を絞ることができないだからだ。


5-2「『準ヒューマンエラー』という分類の設置」

とはいえ、BCDEFGのケース紹介後に述べたように、「この他にも表現の仕方を含めれば無数とすら言えるだろう」から、「悪意のある過ち」と「ヒューマンエラー」の狭間を分類として括ることができる概念を導入したほうが、整理がつきやすいと思う。

そこで、私は、「準ヒューマンエラー」という分類上の概念を、悪意のある過ちとヒューマンエラーの狭間に適用する。※3

なお、「準ヒューマンエラー」という分類へケースBCDEFGを編入させたからといって、ケースBCDEFGの扱いを、「ヒューマンエラー」に比し、疎かにしていいという意味ではない。むしろ、「準ヒューマンエラー」への取り組みを優先させるべきことを、次セクション以降を読むことによって理解頂けるであろう。


※1:
例によって「ヒューマンファクター」と呼ぶのは、一向に構わない。

※2:
事故の原因を究明する段階では、「つい」「うっかり」という言葉は頻繁に登場するもので、究明の姿勢が甘いと、ヒューマンエラーであろうとなかろうと、何でも「つい」「うっかり」で済まされてしまうので、事故調査担当者はくれぐれもご注意ください。

※3:
これまた例によって、「準ヒューマンエラー」を「ヒューマンファクター」と呼ぶのは、一向に構わない。


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