セクション5 「作業手順書の作成・事例編-1(サンプル編)」 コース000032 

事例(サンプル)その1
 火災対応手順書・大規模屋内集客施設編
セクション5
「火災対応手順書事例(サンプル)-3・施設総責任者」

 

5-1「施設総責任者の手順のポイント」

施設総責任者の手順を規定する上でのポイントは、手順を規定する以前に、この職務をシフト制の当番職務として規定することにある。なぜならば、この職務がシフト制の当番職務としてではなく、一人格のみに付与された職務としてしまうと、該当者は、施設を運営する日は全日全時間出勤しなければならず、もしそうしたらすぐ疲弊してしまい、火災対応のみならず職務全般に支障をきたすからである。しかし、シフト制の当番職務として職務を設定すれば、たとえば小売り販売をする大規模施設の場合それが年中無休の販売体制であっても24時間営業でなければ、店長と副店長、総務部長等の3名の交替により施設総責任者の職務を週休2日で回すことが可能となる。※1

が、現実には、店長という一人格に付与される職務と、施設総責任者という施設運営上の職務の区別がついていないために、店長が不在な時には施設総責任者も不在という事態となってしまったり、逆に店長が常に店舗に滞在しようと努力するあまり疲弊し切ってしまったりするケ-スがあろう。これはぜひ改善されるべきである。

とかく経営トップは、店長クラスの仕事に対する熱意を異常なほど長い勤務時間で見ようとし、もし抜き打ちで店舗を視察した際に店長が休日で不在であった場合に激怒したりするケースすらあるが、これは経営トップの施設運営に関する根本的な考え方の誤りだ。もし店長を激怒するならば、それはシフト制の当番職務として設定されるべき施設総責任者が不明な場合である。決して、店長が休日を取っている時ではない。


5-2「補佐をつけることの重要性」

施設総責任者の役割は、自らが初期消火をしたり、避難誘導をしたりする等を行うことになく、情報の集約と整理、それに基づく総合的な判断、その判断に基づく適切な指示、消防署・消防隊長への報告等である。したがって、火災の発生を知ったら一番に補佐を指名し、補佐を連れ従って、以降の行動をすることが求められる。これにより、たとえば無線でも連絡がとれない場所へ補佐を伝令として行かせることによって、自らが不用意に移動しなくても済む。また、次々と報告される避難者数の集計も、補佐に代行させることにより、自らに雑務的な作業負荷をかけることなく、高度な判断に集中することができる。

なお、火災はいつ何時発生するか分からないため、補佐は事前に定めておくのではなく、発生時点で、最も身近にいる職員の中から指名する。指名は複数名とする。※2


5-3「避難集合場所の選定」

前述にもあるように、屋内施設の火災においては、一見、施設の外に出てしまえば安全のように思える。しかし、それが大規模な施設である場合には、屋外に吹き出す炎や煙も大規模になる可能性があるため、風下に避難することは避けなければならない。しがって、風向きを見て、風上に避難すべきある。

この考え方を受け、まず組織は、あらかじめ施設周辺の東西南北4ヶ所に候補地を定めておく。これが東西南北4ヶ所である理由は、どの方角から風が吹くか、事前に特定できないためである。
施設総責任者は、施設の外に出たら一番に、風向きを見て、この4つの候補地のどれが適切か判断し、警備隊長へ無線連絡する。

なお、施設周囲に煙が渦を巻いてしまう可能性もある。こうした場合も想定して、候補地を定める際には、施設ぎりぎりにではなく、ある程度離れた位置に定めておくべきである。
もし、自らの施設の他にも大規模な施設やビルが軒を連ねるような地帯の場合には、それらの管理者たちと地区行政担当者や消防署と連携を取り、共通の避難場所を設定しておくべきである。


5-4「消防署・消防隊長との連携」

施設総責任者であろうとも、いったん火災が発生してしまった以上は、その規模にかかわらず、消防署の指揮下に入らなければならない。消防署が火災現場に到着するまでの間は、総指揮をふるう責任があるが、消防署が到着したら直ちに消防隊長へ報告し、その後、指揮下に入る。
たとえ、消防署が到着するまでに「消し止めた」「全員避難した」と思えても、消防署が到着したら直ちに消防隊長へ報告し、その後、指揮下に入る。「消し止めた」「全員避難した」という判断が、実は、誤っているかもしれないからだ。日頃から火災に接していない人間による判断は、日頃から火災に接している人間の判断に比べたら、正確性が遥かに低いことを知っておくべき、というわけである。


※1:
もっとも、24時間でなくとも18時間とか20時間とかいった運営体制ならば、4名体制でなければ苦しい。

※2:
この「補佐」も、あらかじめ定めた職務ではなく、火災発生時点の偶然の立場を活用した役割分担となる。


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