セクション3 「作業手順書の作成・事例編-1(サンプル編)」 コース000032 

事例(サンプル)その1
 火災対応手順書・大規模屋内集客施設編
セクション3
「火災対応手順書事例-1・火災発見者」

 

当セクション以降、具体的な事例(サンプル)と照らし合わせながら、説明をしていく。右欄に、事例(サンプル)を表示するためのリンクが貼ってあるので、クリックをして内容をご覧になった上で、以下を読んで頂きたい。なお、1セクション・1事例(サンプル)となっているので、以下、セクションごと、右欄をクリックして事例(サンプル)をご覧頂きたい。(右欄の、淡いグリーンのラベルの中。なお、読み上げソフト対応用の事例(サンプル)テキスト情報は、後日、アップロードします。現在はJPEG仕様のみです)

さて、当セクションでは、一番最初に火災対応をする立場となる「火災発見者」の対応手順について述べる。


3-1「簡素にすべき火災発見者の手順/その理由」

火災対応手順は全般になるべく簡素に規定すべきだが、特に「火災発見者」の手順は簡素に規定すべきである。火を眼前にした者はただでさえパニックになる可能性が大きいからでもあるが、この立場は、大規模屋内施設に勤務する者ならば誰もがなり得る立場でもあり、それはつまり防災の専任担当でなくともなり得る立場だからだ。防災の専任担当でないということは、ふだんは防災以外の仕事のことで頭が一杯で、組織が定めた火災対応手順を毎日のように頭の中で反復することがないということである。しかも、期間に定めのない従業員(いわゆる正職員・正社員)のみならず、臨時雇用従業員・パートタイマーや、派遣社員、業務委託先社員も、火災の発見者になり得る。派遣社員、業務委託先社員も臨時雇用やパートタイマーである確率が高く、出勤先の組織が定めた火災対応手順に馴染む機会はなおさら少ない。※1 しかし、いざ火災を発見したら、防災の最前線に立つ者として機敏な行動を取ってもらう必要がある。だからなるべく簡素な手順とすべきなわけである。


3-2「火災発見者の手順のポイント」

火災発見者の手順のポイントは、「何よりもまず通報すること」である。右欄の事例(サンプル)においても、一番に通報することを規定してあるが、大規模集客施設においては、火災発見者は通報さえすれば、その義務のほとんどが果たされたと言っても過言ではない。 なぜならば、通報さえあれば、防災専任者も含めた他の多くの職員が行動に移せるからだ。もし通報せずにいたら、発見者のみ火災を知る状態のままになりかねず、それでは組織による対応力を発揮できない。※2

なお、「火災を発見したらともかく通報するように!」という教育ならば、臨時雇用従業員・パートタイマーや、派遣社員、業務委託先社員に対し反復的に実施することが可能だ。毎日の朝礼で実施したとしても、一回5秒もかからない教育時間である。惜しむまでもない時間だと思うが、もしこうした教育でさえ惜しむ組織があるならば、施設運営の基本姿勢を改めるべきだ。


3-3「初期消火についての考え方」

事例(サンプル)の手順書の記述をご覧頂けると分かるように、「初期消火が可能と判断したら、初期消火を行う」と私ならば規定する。この規定を裏返せば、自動的に「不可能と判断した場合には発見者としては消火活動をするな」という意味にもなる。この意味を不道徳に思う人もいるかもしれないが、不可能な消火に挑戦しているうちに時間を浪費し、避難誘導の時間を失ってしまうことを恐れ、私はこう判断する。だから、「初期消火が不可能と判断したら、お客様を誘導しながら避難する」ことを、事例(サンプル)の手順書では規定してある。

そこで浮上して自然なのは、「初期消火が可能か否か判断できる基準を、ほんの一時雇用でしかない人たちにまで示すことができるのか?」「示す基準は規定とすることができるのか?」という疑問である。私は、「参考として目安を示すことは構わないが、規定として基準化することはできない」と判断する。それゆえ、事例(サンプル)の手順には、基準を規定していない。※3

こう述べると、さらに浮上して自然なのは、「ほんの一時雇用でしかない人たちにまで、初期消火が可能か否かの判断を求めること自体、おかしいのでは?」という疑問である。私は、おかしくないと考える。なぜならば、一時雇用であろうとなかろうと、そこに配備する職員の最低限の能力として、自ら初期消火が可能か否か判断できるだけの能力があって当然と考えるからだ。では、なぜ当然か? 一時雇用であろうと、来客者の安全を預かる立場となるからである。それゆえ、雇用する際・配属先を決める際、当該能力の有無を見抜くべき、と私は考える。だが、現実には、採用面接官や配属決定担当者としては正しく判定したつもりが実は誤っていたという場合もあろう。何しろ大量に一時雇用する際には一人当たりの面接時間はかなり短くなる。短い時間で能力を見抜くのはなかなか難しい。だから、雇用後、能力を付けてあげるためにも、火災に関する教育を頻繁に行なうようにと3-5で強調したのである。

ともかく、もし火災が起き死傷者を出してしまった場合に、「勤務している人間の大多数が一時雇用でしたので・・・」との言い訳で施設運営責任を免れることができないことは、誰もが理解できよう。この普遍の理解から逆算してもらえば、たとえ一時雇用の職員であっても、上述のような判断能力が必要なことは充分納得頂けることと思う。


3-4「施設の外に出た後の行動についての考え方」

屋内施設の火災においては、一見、施設の外に出てしまえば安全のように思える。しかし、それが大規模な施設である場合には、屋外に吹き出す炎や煙も大規模になる可能性があるため、風下に避難することは避けるべきである。したがって、風向きを見て、風上に避難すべきある。この考え方を受けた行動規定が、事例(サンプル)の手順の(5)以降に記載されている。※4

さて、そこで前提となるのが「避難集合場所」である。事例(サンプル)の手順書の註※4に記載されているように、あらかじめ施設周辺の4ヶ所に候補地を定めておく。これが4ヶ所である理由は、どの方角から風が吹くか事前に特定できないため、候補地は東西南北とする必要があるからだ。これら候補地は、地図に記した上、ふだんから掲示しておき、職員の目に焼きつけておくべきである。

この場所に集合した後、施設総責任者へ報告を行うことも、必須の手順である。どの時点で消防署員が到着するか特定できないが、いずれにしても施設総責任者は消防隊長へ、避難状況を集約して伝える義務がある。それにより、まだ人が屋内に残されているのであれば、どの辺りに残されているのかを伝え、救出を依頼しなければならない。だから、「火災発見者」およびその他避難誘導を行う者たちは、施設総責任者へ報告をすることを規定手順の最後とする。


※1:
総人件費削減のために、直接雇用者数をなるべく減らし、派遣社員・業務委託先社員に接客現場を預ける傾向が長期に渡り続き、結果、接客現場の火災発見と避難誘導は彼らがキーパーソンとならざるをえない状況の大規模屋内集客施設もあることだろう。接客業が最優先で取り組むべき安全という課題が、直接雇用ではない人たちの腕にかかっているのは、いくら成果主義を強調しても、今ひとつしっくりこない感じがする。受講者の皆さんは、どう思われますか?

※2:
これはあくまでも地上に根ざした大規模屋内集客施設の想定であるわけだが、たとえば空に浮いている旅客機の機内火災となれば全く設定が異なり、他の乗員への通報後、すかさず消火活動に入り、ともかく消火し切らなければならない。このことからも、施設の種類によって、作業手順が異なることを理解してもらえると思う。

※3:
もし参考情報として目安を示す場合は、コース000030「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」パート2セクション9を参照すること。不用意な示し方をすると、参考情報が規定情報との誤解を招き、混乱が発生する。

※4:
ちなみに、この考え方は、「火災発見者」のみならず他の立場や職務にも適用され、「避難誘導者」「エリア責任者」「警備隊」においてもそれぞれ手順の後半に、「火災発見者」同様に手順を反映している。


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