セクション3 「ヒューマンエラー・概論 -3『対策論』」 コース000004 

セクション3
「被害者・被災者との関係種類別の留意点」

さて、ヒューマンエラー(もしくは準ヒューマンエラー)が発生しそれが原因となって、事故や災害が起きるという構造には、

甲:ヒューマンエラー(もしくは準ヒューマンエラー)を起こす当人(以下、原因者と記す)

乙:事故や災害で損害を被る人・被災する人(以下、被害者と記す)

が存在する。

そして、甲においても乙においても、

A.組織内の人が該当する場合(以下、内部者と記す)

B.組織外の人が該当する場合(以下、外部者と記す)

がある。※1

さらに、

イ.甲のみが被害を受ける場合(以下、「自己被害のみ」と記す)

ロ.乙のみ被害を受ける場合(以下、「他者被害のみ」と記す)

ハ.甲乙ともに被害を受ける場合(以下、「自己被害・他者被害の併発」)

という断面もある。

もし或る組織が、外部者のヒューマンエラーに関してまで責任を持つことを前提とした場合には、これらの組み合わせすべてに責任を持つことになる。

ついては、以下、これらの組み合わせについて、それぞれの特徴と取り組み上のポイントを述べる。


3-1「甲(原因者)=A(内部者)で、イ(自己被害のみ)」

これは、内部者が原因者となり、内部者が害を被る場合である。

この組み合わせは、外部者へ被害を与えず、組織内だけの責任となる。社会の批判にさらされる度合いが小さく、そのため、対策に掛ける時間・経費・労力等の投資(以下、対策投資)が小さくなりがちで、優先順位も低くなりがちかもしれない。

しかし、死傷事故を誘発する類の場合、つまり組織内の労災(労働災害)のみ誘発する場合は、人権上の観点から、対策投資と優先順位を低くしてはならないと、私は思う。なぜならば、人命は、組織外・組織内に関わらず、無条件で尊重されなければならないからだ。

また、その件だけにスポットライトを当てれば、労災(労働災害)しか起きなかったように見えるケースでも、より大きな問題の一部もしくは兆候として、その労災が起きる場合もある。だから、いったんこの組み合わせ(甲・A・イ)だと判断しても、さらに調査を続け、背景を徹底的に探ること。

なお、この着眼点については、コース000001小説式eラーニング「ヒューマンエラー」にて詳述しているので、そちらを受講すること。


3-2「甲(原因者)=A(内部者)で、ロ(他者被害のみ)」

これは、内部者が原因者となり、外部者へ被害を与えた場合が該当する。

この場合は、加害・被害の構図が明確な上、社会問題として追及される可能性が大きいため、死傷者事故を誘発する類でなくても、よほど倫理観が低い組織でない限り、対策投資は大きく優先順位も高くなるであろう。


3-3「甲(原因者)=A(内部者)で、ハ(自己被害・他者被害の併発)」

これは、内部者が原因者となり、自らも害を被り、組織外の人までも巻き添えにする場合等が該当する。

この組み合わせも、甲-A-ロと同様、社会問題として追及される可能性が大きいため、死傷者事故を誘発する類でなくても、よほど倫理観が低い組織でない限り、対策投資は大きく優先順位も高くなると思う。


3-4「甲(原因者)=B(外部者)で、イ(自己被害のみ)」

これは、外部者が原因者となり、その人自身のみ害を被った場合が該当する。

これは、一見、外部者の自己責任で、組織側の責任がないように思える場合もあるかもしれない。

しかし、たとえば組織が何かしらの製品を販売したり・サービスを提供し、その製品の使用方法・サービスの利用方法について購入者がヒューマンエラーを起こし損失をした場合、たとえ賠償責任を免れようと、製造者・サービス提供者は、購入者のヒューマンエラーにより損失が発生しないよう、自主的に改良すべきだと私は思う。

改良するためには、事後の調査は当然のことながら、日頃よりお客様からの苦情・クレーム等を聴く耳を持ち、得た情報の真偽を見分け、改良に有用な情報を吸い上げていく能力を持つ必要がある。つまり、平時における前向きな苦情対応も、広い意味では対策となる。

※それがサービスの場合、自社が運営する集客施設の中においては、責任は一層重くなることは言うまでもない。


3-5「甲(原因者)=B(外部者)で、ロ(他者被害のみ)」

これは、外部者が原因者となり、その人自ら害を被ることはなかったものの、他者(組織外の他者)が被害を受けた場合が該当する。

これも、一見、外部者の自己責任で、組織側の責任がないように思える場合もあるかもしれない。

しかし、前項の「甲-B-イ」と同じ様に、製造者・サービス提供者は、購入者のヒューマンエラーにより損失が発生しないよう、自主的に改良すべきだ。

そして、改良するためには、事後の事故調査のみならず、平時における前向きな苦情対応が必要である。

ただし、加害者と被害者の双方から公平に言い分を聴くこと、双方ともなるべく詳細な状況調査をすること、が前項「甲-B-イ」とは異なる特性となる。


3-6「甲(原因者)=B(外部者)で、ハ(自己被害・他者被害の併発)」

これは、外部者が原因者となり、自らも害を被り、他者も害を被った場合が該当する。

これも前項・前々項と同様、自主的に改良すべきであり、平時における前向きな苦情対応も対策の一環となる。

なお、甲が死亡するような事態の場合には、本当に甲によるヒューマンエラーなのか、それとも甲が意図的に行なったことなのか、甲だけに起因する重大な過失なのか等々、事実を掴むのが困難となる。その点は3-4でも同じだが、この組み合わせ(甲-B-ハ)においては、他者被害も発生しているだけに、その被害者や遺族に対する重大な説明責任も加わる。だから、どれだけ困難であっても調査をすべきである。ただし、事実か否か確認できない以上は、結論はあくまでも仮説として提示すべきである。


※1:
AはさらにA-1「当人」とA-2「それ以外の内部者」に分けることができる。BはさらにB-1「外注者」とB-2「それ以外」、B-2がさらにB-2-1「お客様・利用者・購入者等」とB-2-2「それ以外」に分けることができる。だが、ここでは便宜上、分けずに進める。


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