セクション2 「ヒューマンエラー・概論 -2『原因論』」 コース000003

セクション2
「事故・災害の原因としてのヒューマンエラー」

2-1「事故・災害 原因の二大分類『ヒューマンファクター』『非ヒューマンファクター』」

「ヒューマンエラー・原因論」のタイトルのもと考察をする場合、本来ならば、ヒューマンエラーの原因(つまりヒューマンエラーが発生する原因)についてだけ考察すべきなのだろう。が、当コースでは、「事故・災害の原因としてのヒューマンエラー」についての考察も行うこととする。

まず、事故・災害の原因を、ヒューマンエラー以外の要素も併せて全体観で考えてみよう。

いかなる事故・災害であっても、それを発生させる原因が何かしらある。当コースでは、原因を、「ヒューマンファクター(人的要因)と「非ヒューマンファクター」に大別する。

「非ヒューマンファクター」とは、「ヒューマンファクターではない要因一切合切のこと」である。当コースは、ヒューマンファクターの中でもヒューマンエラーに焦点を当てたコースであるため、「非ヒューマンファクター」の内訳に踏み込むことはしない。

ただし、たとえ「非ヒューマンファクター」が直接の原因で事故・災害が起きたとしても、その可能性を予見しておきながら予防策を講じていなかったことが分かった場合※1には、「ヒューマンファクターとしての間接原因もあり」との判断も加えておくべきだと私は思う。

現代、非ヒューマンファクターの中でおそらく代表格となろう自然現象や物理現象・化学現象等に関する研究や予測技術はずいぶん進歩した。だから、これらが原因で事故・災害が起きる可能性の予見は、かなり多くの事柄について可能だろう。

それゆえ、現代において「事故・災害の原因として、ヒューマンファクターの比率は高い」と考えても差し支えないと思う。


2-2「ヒューマンファクターの分類と発生頻度」

事故・災害の原因としてのヒューマンファクターは、コース000002での概念定義を前提に、次の4分類とする。※2

a.計画的犯罪・テロ等
b.悪意のある過ち
c.準ヒューマンエラー
d.ヒューマンエラー

さて、これらの発生頻度について考えてみる。しかしながら、国や業界等を特定せず、かつ、全件調査もしないのに発生頻度を断定することはできない。そこで、想像に基づく仮定を試みる。

が、a.計画的犯罪・テロ等は、当コースの本題である「ヒューマンエラー」とはあまりにもかけ離れている出来事となるため、最も深刻な事であるものの、以降、考察から外す。

したがって、残る「b.悪意のある過ち」「c.準ヒューマンエラー」「d.ヒューマンエラー」の3項の相対的な発生頻度を想像してみる。

まずbは、雇用担当者の判定の甘さによりその組織に適していない人材を雇用してしまったり・適していない業務に配属してしまったり、組織の内情が劣悪で構成員の意欲のみならず倫理観にまで悪影響を与えているような状況でない限り、発生頻度は低いと想像する。

dは、その概念の定義により、該当範囲がかなり絞り込まれているため、cと比べ発生頻度は低い。

そのぶん、cの準ヒューマンエラーは、コース000002にて強調したように多種多様なケースがあり得る。 したがってdと比べ頻度が高いと想像する。

以上、大雑把な想像であるが、仮にこの想像結果を妥当とすれば、社会全体で事故・災害の発生件数が減少するためには、「準ヒューマンエラー」に分類されるヒューマンファクターへの対策件数が増加しなければならない理屈となる。

ついては、当コースは「ヒューマンエラー・原因論」というタイトルであるものの、ヒューマンエラーのみならず準ヒューマンエラーの原因 論も扱う。

なお、悪意のある過ちは、ヒューマンエラーや準ヒューマンエラーよりも深刻な問題であるが、職員採用論や組織ロイヤリティー論などにて扱うべきと思うため※3、これ以降、主題から外す。


2-3「『準ヒューマンエラー』を原因扱いする際のポイント」

コース000002でも触れたが、準ヒューマンエラーを起こした当人に対し事故調査を行い、当人に原因を語らせようとすれば、かなりの確率で、「つい」「うっかり」という言葉を用いた説明がされるであろう。

ヒューマンエラーの定義文中にも「つい」「うっかり」という言葉が登場するわけだが、当人が「つい」「うっかり」という言葉を用いたからと言って、すかさずヒューマンエラー扱いしてしまうと、特性の仕分けがつかず、原因究明が遠のいてしまう。

したがって、「準ヒューマンエラー」を原因扱いする際のポイントは、次の通りとなる。

●準ヒューマンエラーを原因扱いする際のポイント
「つい」「うっかり」という言葉を鵜呑みにし、何もかもヒューマンエラー扱いしてしまわないこと。

私は、当人の表層意識の上では「ついやってしまった」「うっかりやってしまった」と認識されていても実際には「つい」「うっかり」ではないというケースがある、と私は想像する。それほど、「つい」「うっかり」という言葉は、使い勝手がよく、広く出回っており、結論に用いられやすい言葉だと私は判断する。

ともかく、「つい」「うっかり」という言葉を定義文中に持つ「ヒューマンエラー」でさえ、「つい」「うっかり」を原因の結論として位置づけてはいない。それにもかかわらず、準ヒューマンエラーの原因が「つい」「うっかり」と結論づけられるようでは、真の原因は不明のままとなる。


2-4「『ヒューマンエラー』を原因扱いする際のポイント」

「ヒューマンエラー」を原因扱いする際のポイントも、「つい」「うっかり」という言葉で原因の結論づけをするのではなく、なぜ「つい」「うっかり」してしまったのか、その背景や経緯、原因を掴むことにある。

つまり、ヒューマンエラーの定義文の通りいったん「つい」「うっかり」には違いないと認め、その上で、危ないと分かっていながらもついやってしまった原因、うっかりやってしまった原因を究明するのである。

この究明姿勢により、「ヒューマンエラーが原因の事故・災害」という観点から、「ヒューマンエラーの原因は何か」という観点へと移っていくことになる。


※1:
ヒューマンエラー以前に、このようなケースを減らすことが、求められる。

※2:
コース000002では、ヒューマンエラーのみならず、悪意のある過ち、準ヒューマンエラーも定義した。
なお、コース000002においては、「計画的犯罪・テロ等」に分類記号を割り当てていなかったため、a.悪意のある過ち、b.準ヒューマンエラー、c.ヒューマンエラーと記してある。

※3:
もちろん、犯罪としての悪質度合いも高いので、刑法の論として扱うべきでもあるが、私は法律の専門家ではないので、私を講師としたコースとしては扱わない。が、いつの日か、法学部を設置し、法曹界から担当講師を招聘したいと思う。


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