セクション4 コース000032「作業手順書の作成・事例編-1(サンプル編)」

「作業手順書の作成・事例編-1(サンプル編)」
■その1「火災対応手順書・大規模屋内集客施設編」

■セクション4「火災対応手順書事例(サンプル)-2・避難誘導者」

4-1「避難誘導者の手順のポイント」

避難誘導者の手順のポイントは、施設に勤務する職員の全員を避難誘導者として動員することにある、と私は判断する。その理由は、当コースでいう大規模屋内集客施設とは、屋内に居る客が何百・何千、場合により万の単位と想定しているが、これだけ多数を、多階層かつ構造が複雑かもしれぬ大規模な屋内施設の中から誘導するためには、職員全員を避難誘導者として動員しても不足なほど※1、と考えるからである。ともかく、防災の専任でなくとも、大規模屋内集客施設に勤務する者ならば、平時に接客区画に立つ職務ではない者であっても全員、施設構造と避難経路を理解し、誘導できるようにしておくべきである。
上記を前提として、もう一つのポイントとなるのは、事例(サンプル)の手順書やその註※1にも記載されているように、あらかじめ「火災時誘導担当区画」を、組織が各職員へ割り振っておくことにある。そうしないと、やたら職員が集中してしまう場所と、客が多数残されているにもかかわらず職員が手薄な場所が発生してしまい、後者の客が逃げ遅れる可能性が大きくなる。

火災対応手順書・事例(サンプル)-2「避難誘導者」

4-2「非常放送の位置づけと避難誘導者の判断」

事例(サンプル)の手順書にあるように、火災時誘導担当区画に到着した後、避難誘導開始のスタンバイをし、非常放送が流れたら、誘導を開始する。
しかし、これも事例(サンプル)の註2-1に記載されているように、放送が流れる前に火や煙が見えた場合は、放送を待たずして、避難誘導を開始する。つまり、非常放送の情報よりも、その場にいる職員の判断を優先して、避難誘導を開始する。そのため、非常放送の情報は、火災現場にいる職員にとっては、指示情報ではなく参考情報となる。

非常放送が参考情報であるという決め方に抵抗を感じる人も多いだろう。だが、火や煙を目の前にした職員の判断は、放送内容よりも現場の実態に即している可能性があると私は考える。それに、自らの命をかけての行動となるため、責任と権限は否応なしに大きい。だから、やはり、非常放送による情報は、火災現場にいる職員にとっては、指示情報ではなく参考情報と位置づけるべきだと私は思う。

しかし、火災現場にいない避難誘導担当職員、つまり、自らが誘導を担当する区画にまだ火や煙が回ってきていない職員にとっては、同じく参考情報であっても、頼りがいのある情報となる。なぜならば、非常放送には施設全体の状況に関する情報が含まれている可能性もあり、その場合は、適切な誘導経路・誘導方向に関する情報を得ることができるかもしれないからだ。が、そうであっても、避難誘導の途中で突然火や煙に遭遇する可能性はある。だから、非常放送は参考情報にしかなりえない。
この点からしても、雇用時・配属時、能力に関する判定は、慎重に行うべきである。


※1:
たくさんのお客様を誘導することは、火災のように深刻な状況下になくとも、人数に圧倒されてパニックになりやすい。それが火災となれば、いわばパニックにパニックを掛け合わせたような事態にもなりかねない。だから、職員一人当たりの避難誘導者数を少しでも少なくする必要がある。そのためには、平時はバックヤードに勤務する職員であっても避難誘導へ動員できる体制を整えておく。具体的には、職務分掌マニュアルの作業項目一覧表の、その他・随時欄に、「火災時避難誘導」という作業項目を記入しておくことから始めよう。なお、職務分掌マニュアルの作業項目一覧表については、コース000030「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」を参照すること。


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