パート4・セクション7 コース000070「人事制度の構築と運営の方法」(MM式チームワーク主義育成型人事制度)

<パート4>
 ■セクション7「賞与と報奨金制度」

今さら私が言うまでもなく、少なくても年功序列型の制度において「賞与」は本来の意味が極めて希薄で、前年の支給実績から期待される予定年俸を構成する要素として扱われてきた。その証拠に、たとえば住宅を購入するために長期ローンを組むために審査を受ける際、賞与の実績額を除外しない。いわゆる正社員・正職員については、賞与は当然もらうことができる予定収入との社会通念があったわけである。
バブル経済崩壊以降、ドラスティックな人事制度変更を行なった企業や、制度変更しようとしまいと経営が苦しくなった企業においては、賞与が当然の予定収入という概念は過去の遺物となってしまったかもしれない。
だが、それでもまだ、前年度に支給実績があればその後の予定収入として期待される社会通念がなくなったわけではないと私は受け止めており、企業業績次第で支給されたり支給されなかったり変化しても当然という本来の意味が希薄な状態は、続いていると思う。

もっとも、この話は、景気のちょっとした浮き沈みでも業績に大きな影響が出てしまう小企業・零細企業においては、バブル経済崩壊以前から無縁の話である。その面では、皮肉な言い方を許してもらえば、小企業・零細企業は最初から凄まじい成果主義賃金制度を取ってきたようなもので、いわゆる成果主義人事制度をもし進んだ制度だとするのならば、大企業のほうが遅ればせながらようやく小企業・零細企業に追いついたようなものだ。

しかし、当コースが述べる人事制度は、いわゆる成果主義(それが具体的に何を指すのか意見は割れるにせよ)とは関係がない。だから、そもそもの善し悪しはともあれ、また実際に支給できる体力が企業にあるか否か個別課題はさておき、旧来通念通り賞与は予定年収的な扱いをすることを前提に、賞与制度を位置づける。したがって、賞与は、実務考課(業績考課)の結果による支給率の差はあるが、たとえば企業の年商を何倍もアップさせてしまうような莫大な貢献をした人に報いることはしない。

そこで、当人事制度は、本来の意味での賞与としての「報奨金制度」を用い、賞与制度では報いきれない人に対する謝礼をすることを前提とする。ただし、いわば金一封のような形ばかりの額の謝礼だけしか与えるつもりがないのでは、制度は形骸化してしまうので、年商を何倍もアップさせてしまうような莫大な貢献をした人には、桁違いの額で報いる覚悟を持って制度を運営しなければならない。そうでなければ、たとえば青色ダイオード発明の件のように、いざとい時に大もめしてしまう。ただし、もちろんこの話はあくまで経営者を除く社員の話であり、経営者をこのような報奨金の対象としては損金処理ができず困ってしまうだろう。もし経営者が青色ダイオード並みの発明をしたのであれば、たとえ涙を呑んででも、会社のためは自分のためと思って当年の報償としては予定外収入を辞退するか、翌年以降の役員報酬の上昇で報いることをお勧めする。

さて、むしろ肝心な「賞与」の仕組みが後回しになってしまったが、当人事制度では賞与支給をどのようにして行うのか?
官と民ではそもそも人件費の出所が異なるし、たとえ民だけに焦点をあてても、業態・業界によって業績予測や支給タイミング、労組の有無等々の諸条件が異なるため、一律には語ることはできない。が、だいたいのイメージぐらいは掴めないと困るから、民だけを想定して、それも特に何の業界すら特定せずに流れを記すと次の通り。自社の実態と照らし「随分と雑な・・・」と思う人もいるかもしれないが、だいたいのイメージとなれば幸いである。

なお、下記は、半期に1回、各人の実務考課(業績考課)を行うことを前提とした夏季賞与を想定してある。
ステップ1.次年度収支計画を立て、年間の賞与原資総額、および、夏季の賞与原資総額予算甲を仮定する/3月上旬頃
ステップ2.予算甲の内訳比率ア対イ(「基礎部分の総額」対「個人業績上乗せ部分の総額」)を仮定する/3月上旬頃
ステップ3.会社業績予測(当年第1四半期の実績見込み額、および、第2四半期の見込み)を立てる/5月中旬頃
ステップ4.会社業績予測を基に、夏季賞与原資総額実額乙を内定する/5月中旬頃
ステップ5.実額乙からX額(使用者側調整用額)を引き、その結果を実額丙とする/5月中旬頃
ステップ6.実額丙から、標準者賞与実額丁案を仮定する/5月中旬頃
ステップ7.実額丁案によって、労組と交渉開始する/5月下旬頃
ステップ8.実額丁が決定(妥結)する。/6月中旬頃までに
ステップ9.内訳比率ア対イを参考に、実額丁の内訳を確定する。/6月中旬頃
ステップ10.「各人の『給与ベース+年齢給』」「各人の実務考課(業績考課)の結果」を要素として加え、各人の賞与実額を算出する。/6月中旬頃
ステップ11.各人へ支給する。/6月下旬頃

・予算甲=次年度の夏季賞与原資総額の仮定額。
・内訳比率ア対イ=予算甲の「基礎部分の総額」対「個人業績上乗せ部分の総額」の比率。
・実額乙=当年度の夏季賞与原資総額の内定額。
・実額丙=実額乙からX額を引いた額。
・X額=使用者側調整用額。労使交渉や業績予測の誤差等の調整余地を持つための使用者側専用の額。
・実額丁案=標準者賞与額の案。実額丙から仮定する。
・実額丁=決定(妥結)した標準者賞与額。
とりあえずイメージは以上だが、実際には個々の会社に合わせて組み立てない限り正しい手順とはならない。


<次のページへ>

<目次に戻る>