パート2・セクション5 コース000070「人事制度の構築と運営の方法」(MM式チームワーク主義育成型人事制度)

<パート2>

■セクション5「管理職・未管理職の区分と等級」

前のパートで述べたように、当人事制度は、いわゆる正社員・正職員を対象とした制度である。そして、いわゆる正社員・正職員は、全員が、管理職・監督者、もしくはその予備役もしくはその候補者、もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者として雇用する。

フリーWebカレッジ 組織運営学科 コース000070 添付図 ©蒔苗昌彦

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それはなぜか? 理由は複数あるが、諸理由を引き離して最も大きな理由は、雇用者側にとっての総人件費管理という課題に根づく。
この課題の前提として、いわゆる正社員・正職員の報酬は、そうではない人たち※1の報酬に比べ、格段と高くせざるをえないという社会的事情がある。これは逆の言い方もでき、臨時従業員・パートタイマー・派遣社員等および「長期雇用フルタイム時給労働者」の報酬は、正社員・正職員の報酬に比べ、格段と安くせざるをえないという社会的事情があるとも言える。※2

この前提により、正社員・正職員には、そうではない人たちに比べ高い報酬を払ったなりの成果を出してもらう必要がある。そうでなければ、雇用者側としては、人的投資の回収率が悪くなる。それによって経営状態が悪化すれば、最悪、多くの正社員・正職員たちをリストラに追い込まざるをえなくなる。

こうした雇用者側・被雇用者側双方にとって不幸な事態は避けるべきだ。
そこで、いわゆる正社員・正職員※3は管理職・監督者もしくはその予備役もしくはその候補者もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者として雇用し、結果全員がそうなるのは無理としてもかなりの確率でそうなってもらう。そして、臨時従業員・パートタイマー・派遣社員等や「長期雇用フルタイム時給労働者」の人たちを多数指揮して大きな成果を出してもらう。つまり、少数の高報酬者が多数の低報酬者を直接指揮・間接指揮するという組織構造を作る。

この構造は、一見、低報酬労働者の搾取を促進するかのように見えるかもしれない。しかし、この構造にすれば正社員・正職員がだぶつくことがないため労働単価の高い彼らの総人件費を抑えることができ、正社員・正職員ではない人たちの人件費に回し彼らの報酬や福利厚生の向上に当てることを、しようと思えば、できるようになるはずだ。決して低報酬労働者の搾取を促進することが目的の構造ではない。※4

少々脇道に入ってしまったが、ともかくいわゆる正社員・正職員は「管理職・監督者もしくはその予備役もしくはその候補者もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者」として雇用する。
しかし、学校・大学を出たばかりの新入社員も雇用していくことを前提とすれば、全員が即時、管理職・監督者になれるわけがない。また、たとえ努力したとしても、結局のところ管理職の資質を得ることなく定年を迎える人も出てくる。

そこで、まず大きくは「管理職」と「未管理職」という区分を設ける。「非管理職」ではなく、「未管理職」と呼ぶのは、いずれそうなれるよう努力しているものの未だ管理職として任命するに至っていない人たちの群を括るからである。「非管理職」と呼んでもつじつまが合うが、雇用の趣旨としては「未管理職」というほうが適切だ。聞き慣れない言葉かもしれないが、お付き合い頂きたい。

管理職のほうは階層4と3という縦の区割りを設け、4は部長クラス、3のほうは課長クラスが該当する形とする。
未管理職のほうは階層2と1という縦の区割りを設け、2は現場リーダークラス、1のほうは実務最前線で働くクラスを該当させる。

全員に管理職・監督者を目指す努力義務があるとはいえ、こと新入社員・新入職員においては、育成の観点からも実務最前線で働いてもらう期間を設けるべきであるゆえ、階層1という設定は欠かせない。

管理職・未管理職とも等級を設け、基礎能力の伸長に応じた昇級を行う。※5 パート1でも述べたように、号俸の要素は一切入れず、その代わり等級をなるべく細かく設定する。上記の図を作成する上では細かい等級の区切りができなかったが、特に未管理職においては、いくら努力しても管理職に任命されることのない人への配慮も含め、実際には数十、場合によっては百を超える数の等級としても構わない。いずれにしても号俸は設定しないわけだから縦に一本化され、等級をいくら細かくしても、縦横のマトリクスの組み合わせとはならず、管理は実に簡素となる。

管理職の区分においては、役職※5に適任な人がいても、たまたまポストが塞がっているケースがあることと、危機管理の上でスタンバイ要員を置いておくべきという考え方により、「役職予備役」という枠を設けておく。
また、今のところ役職に就く可能性はないが(つまり部下を持つ職務に就く可能性はないが)、役職並みの組織貢献が期待される高い専門技術や専門能力等を持った人たちを「高度専門職」という枠にて扱い、便宜的に管理職の区分に入れる。

未管理職の区分においては、職制※6に適任な人がいてもポストが塞がっているケースと、職制には適任ではない人・職制になるまでには育っていない人が存在するケースのいずれにも応じるため、全員が管理職・監督者を目指す制度ながらも「非職制」という枠を設けておく。

なお、管理職・監督者、もしくはその予備役もしくはその候補者、もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者として雇用する以上は、この努力義務をいつまで経っても履行しない場合には契約違反となり、解雇や転職勧奨の対象とする。当然、解雇や転職勧奨を進めるに至るまでの能力考課も低くなる。
この解雇や転職勧奨が上記でも述べたような旧来型の正社員雇用におけるリストラとは異なることは、「雇用時に努力義務の契約締結」→「義務を果たさないことによる契約違反」→「雇用解除」という構図との違いからご理解頂けると思う。
ただし、パート2セクション6「長期雇用フルタイム時給労働者の位置づけ」にて紹介する制度の枠組みを採用すれば、解雇をせず、引き続き会社で働いてもらうための受け皿はできることになる。


※1:
ここで言う、いわゆる正社員・正職員ではない人たちとは、臨時従業員・パートタイマー・派遣社員等および「長期雇用フルタイム時給労働者」のことである。
臨時従業員・パートタイマー・派遣社員はそれぞれの概念と名称を定める法律がある。それらに対し、「長期雇用フルタイム時給労働者」は、私が独自にそう呼ぶ雇用分類で、この名称を定めた法律はない。しかし、実態としては、この名称通りの労働者が多数いて、社会を支えている。時にはいわゆるフリーターと呼ばれてしまう場合もあり、皆がみな自らの自由意思のみで「長期雇用フルタイム時給労働」を好んでいるかのようにも言われるが、いずれにしても経済社会構造として、本人が好もうと好まざると「長期雇用フルタイム時給労働者」は大いに必要な存在なのである。
なお、MM式チームワーク主義育成型人事制度は、コース冒頭で述べたように、いわゆる正社員・正職員のための人事制度であるが、どうしても「長期雇用フルタイム時給労働者」を枠組みの中に入れた制度としたいと考える経営者のために、独立したセクションを設けて、その方法論を後述する。

※2:
この事情は、個々の企業の問題であるとともに、我が国の将来にとって大きな問題だ。それについて述べ始めると人事制度の枠を超えてしまうので、当コースとは別の機会を設けて述べる。

※3:
「いわゆる正社員・正職員」という言い回しを執拗に繰り返すのは、※1にて述べた「長期雇用フルタイム時給労働者」も、広義には正社員・正職員であると言ってもおかしくないからである。いくら雇用者側がアルバイト社員とか契約社員とか呼ぼうと、フルタイムの時給労働を長期に渡って雇用していれば、それは一般従業員と同じ扱いをする必要があり、そう扱えば、それは即ち、いわゆる正社員・正職員と同様の存在だと言うこともできる。
では、もし「長期雇用フルタイム時給労働者」も正社員・正職員だと言うことを可とした場合、旧来の「いわゆる正社員・正職員」と「長期雇用フルタイム時給労働者」の仕事の立場上の違いをどうするのか?
その答えとして、「いわゆる正社員・正職員は、全員が、管理職・監督者、もしくはその予備役もしくはその候補者、もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者として雇用」し、「長期雇用フルタイム時給労働者」を直接または間接指揮させて成果を上げる、という考え方が引き出される。

※4:
要は企業理念や経営者の意志次第である。

※5:
もし、能力が著しく低下したままその状況が定着した場合があれば、降級もあり得る。

※6:
管理職として、部下を指揮する職務に就く人のこと。および、その人たちのための枠組み。

※7:
未管理職として、部下を指揮する職務に就く人のこと。および、その人たちのための枠組み。


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