セクション3 「共通マニュアルのポイント」 コース000031 

■セクション3「共通マニュアルの特性」


3-1「共通マニュアルの特性」

前セクションの例も前提として、共通マニュアルは次の特性を持つ。
特性1.共通マニュアルはタイプに関係なく、個々の職務分掌マニュアルとは別の独立したマニュアルとなる。つまり、共通マニュアルを渡された者にしてみれば、職務分掌マニュアルと、配られた共通マニュアルの両方を参照し、仕事を行なうことになる。

特性2.共通マニュアルの作成・配布・改訂・回収等の管理は、その共通マニュアルのテーマとなっている事柄について組織を横断して取り決める部署が責任を持つ。

特性3.タイプD(特定の職群・職種用)は、一般に流通している情報をそのままマニュアルとみなすことができる可能性が大きい。

特性4.タイプEは、機器・道具・施設・設備・コンピュータ等のメーカーから供給される情報を基に作成するか、メーカーが丸々作成したものをそのまま利用する。

3-2「特性から沸く疑問と答え」

さて、前項の特性から、いくつかの疑問が沸いて自然である。次にそれら疑問と答えを記す。

疑問1.「職務分掌マニュアルと共通マニュアルの2冊(もしくは3冊以上)が、別々の冊子となっていると煩わしいので、1冊にまとめてしまうことはできないか?」
どの冊子も薄い場合に限っては、一つのバインダーに綴じるという形でまとめるのは構わないと思う。
しかし、編集して一つのマニュアルへと合併してしまうことは、たとえページ数が少なく厚さが薄い場合であっても、お勧めできない。なぜならば、管理責任を持つ者が異なるからである。
職務分掌マニュアルについては、その職務が所属する部署の長が責任を持つ。つまり、いわゆる「ライン」が責任を持つ。
共通マニュアルは、その共通マニュアルのテーマとなっている事柄について組織を横断して取り決める部署が責任を持つ。
もしどうしても編集して一つのマニュアルに合併するならば、両者のさらに上位に管理責任部署を設けるか、両者が協議しながら編集することになろうが、これは現実的ではない。
冊子が厚い場合は、編集でまとめることどころかバインダーにまとめることすら、現実的ではない。
なお、社内ネットにてパソコン画面上で掲示する場合には、サイトマップとリンクを利用することで瞬時に別ページに飛べ、「複数の冊子をまとめる」という考えにこだわる必要性はなくなると思う。

疑問2.特性3「タイプD(特定の職群・職種等の共通マニュアル)は、一般に流通している情報をそのままマニュアルとみなすことができる可能性が大きい」という言うが、本当に一般に流通している情報がその仕事に役立つのか?
具体的に例をあげてみれば、この疑問が解けることを理解頂けると思う。たとえば、看護師は「特定の職種」に該当するが、この職種は勤務先にかかわらず共通する作業とその手順があり、その情報は看護師になる勉強をする段階で得る情報も含め、医療の世界で専門書として流通しているはずだ。
だから、勤務先にかかわらず共通する作業とその手順については、市販の専門書に依存できると思う。個々の病院特有の取り決め・役割分担・手順等についてのみ独自作成すれば済む。
なお、市販の専門書をそのまま渡すことをせず、転載をして独自編集し印刷配布することは、出版社と著者の許諾を得ない限り著作権侵害となる可能性が高く、お勧めできない。やはり、そのまま配布すべきである。
ちなみに、市販の専門書は、必ずしも「マニュアル」との名称が付いているわけではないが、作業手順等、仕事の方法が記載されているならば、書物の名称にかかわらず共通マニュアルとみなしてよい。
ただし、そこに記載されている通りに実行しなければならないのか(規定情報)、そこに記載されていることを参考に自分の判断で実行しなければならないのか(参考情報)、明確になっている必要があるので、図書の選定の際には、入念に点検すること。もし不明確な図書を選定する場合には、選定責任者が、どの記述が規定情報で、どの記述が参考なのかが分かるようにした一覧表等の別紙を作成し、図書に添付するようお勧めする。

疑問3.独自で作成する共通マニュアルは、そうたくさんはないのでは?
市販の専門書をマニュアルとみなして利用できることや、メーカーが丸々作成してくれるマニュアルを利用できることを前提とすれば、独自で作成する共通マニュアルは、そうたくさんあるわけではない、と私は思う。職務ごとに職務分掌マニュアルがありそれが充分に機能しているとの前提に立っての共通マニュアルなので、なおさらである。

疑問4.特性2で「共通マニュアルの作成・配布・改訂・回収等の管理は、その共通マニュアルのテーマとなっている事柄について組織を横断して取り決める部署が責任を持つ」としたが、具体的にはどのような部署か?
セクション2で示した例を用いて説明すると、最も分かりやすいのが、例3「人事制度運用マニュアル・管理職用」である。どのような組織であろうとも、こうしたマニュアルを発行するのは人事部門であろう。規模が小さい組織ならば、総務部の人事課かもしれないが、いずれにしても人事の専門部署が責任を持つ。

例1「苦情応対マニュアル」は、お客様相談センターやCS推進室等の名称がついた部署が責任を持つ。規模が小さい組織の場合は、お客様相談係やCS推進係等の名称の可能性もあろうし、総務部が担当するかもしれない。いずれにしても、お客様からの苦情に対しどう応対するか、その基準を作る部署(もしくは職務)はあろうから、そこが責任を持つ。

例2「集客施設火災対応マニュアル」は、防災を統括する部署。

例4「調理者用衛生管理マニュアル」は、衛生を総括する部署が、名称はともあれ、法律に呼応して必ず存在するはずだから、その部署(もしくは職務)が責任を持つ。

例5「旅客航空機操縦マニュアル」は、該当する航空機のメーカーが作成と改訂の責任を持つ。配布と回収の責任は、機長と副操縦士を雇用している会社の、機長と副操縦士が所属する部門が責任を持つ。


<次のページへ>

<目次に戻る>