セクション3 「eラーニング(Online Eduction)の動向」 コース000800

セクション3
「eラーニングの展望」

1.大学におけるeラーニング

最近、eラーニングは大学で活用されるようになってきた。たとえば、八洲学園大学は、eラーニングだけで単位が取得できる日本発の大学である。また、熊本大学では、eラーニングで修士の学位を授与できる「教授システム学専攻」(eラーニング専門家養成大学院)を来年度開設する予定だ。放送大学においても、インターネットのストリーミング配信による授業を実験している。他にも、一部をeラーニング授業化し、単位認定する大学が増加している。

アメリカでは、フェニックス大学を中心に、さまざまな大学でeラーニングが活用されており、最近では、スタンフォード大学においてiTunesを活用したeラーニングが導入されたようである。有名なところでは、マサチューセッツ工科大学のオープンコースウェアがある。これは、同大学のほぼ全講義の教材をインターネット上で無償公開するというプロジェクトで、当時、大学関係者に衝撃を与えた。この流れは、日本にも波及し、東京大学や早稲田大学など国内6大学でも同様の試みを行っている。さらに、放送大学では、CS放送を通じて誰でも高品質の講義を視聴できる点が評価されている。


2.モバイルラーニング

携帯電話の普及と技術向上は“秒進分歩”と言われるほどのスピードである。教育工学や教育システム学の研究者たちも、この新しい技術に目をつけ、本当の意味での“ユビキタスラーニング”を実現しようとしている。

たとえば、BEAT(ベネッセ先端教育技術学講座)では、教育工学や学習科学の研究者をはじめ企業家などが集まり、次世代の学習環境について研究している。すでに、WBTで実現しているような環境は、携帯電話でも実現可能になっている。しかし、携帯電話ならではの教育環境を整えていくことが、本当の意味でのモバイルラーニングであり、ユビキタスラーニングにつながる。

今後、モバイルラーニングの研究が進んでいけば、OJTの形も変わっていくかもしれない。たとえば、作業の現場において、作業者は熟達者の作業のポイントを携帯電話で学習し、そして作業を進めていく。こうなれば、技術継承も容易になるだろうし、2007年問題のひとつの解決策になるかもしれない。


3.オープンソースLMS

先に、オープンコースウェアについて紹介したが、eラーニングのシステムであるLMSもオープンソース化されている。例えば、日本イーラーニングコンソシアムとNTTが共同で開発したものなどがある。

また、大学を中心にオープンソースCMS(Webコンテンツマネジメントシステム)が公開されており、eラーニングは標準化とオープンソース化へ向かっている。例えば、XOOPS(ズープス)などがあるが、現在普及しているWeb-CTやMoodleなどについても今後の展開が楽しみである。


4.eラーニングからラーニングへ

ここまでは、eラーニングのシステムやコースウェアやeラーニングシステムをどのように運用していけば良いかという、どちらかといえばハード的な視点が重視されてきた。

しかし、これからは学習の本質について理解することが求められるようになってきている。ところが、企業内教育のスタッフについては、経営学的な文献についての研究は行われているが、こと教育の視点については欠落していることが指摘されている。これは、日本の教育学が学校教育に視点が置かれ、企業内教育はスコープ外であることも影響していると考えられる。

ところが、eラーニングの登場は、このような日本の企業内教育に重要な問題提起をした。企業が、“人の学び”について理解出来ていなかったことが、eラーニングの登場で明らかになったからである。これは、「eラーニング元年」から数年の企業とeラーニングの関係からもわかる。eラーニングブームに乗じてシステムを導入したものの、活用方法がわからず挫折していった企業のなんと多いことか。このような反省から、人の学びについて理解しようという動きが盛んになってきた。2003年に日本イーラーニングコンソシアムが主催した「eラーニングファンダメンタル」という「大学院2単位レベル設定」の講義には、特に広報をしていないにも関わらず、実に200名ほどの参加者が集まった。この講義の目的は、「eラーニングを社会人教育に取り入れるための基礎として、インストラクショナルデザインの基本概念と設計・開発・評価技法を身につけ、発注者としてeラーニングシステム提案書の選択ができるようになる」というものであった。この頃から、インストラクショナルデザインについてのセミナーや書籍が登場し始めた。

現在、日本におけるインストラクショナルデザインの専門家を養成するため、先に紹介した熊本大学や青山学院大学でインストラクショナルデザイナー養成教育のプログラム構築が始まっている。来年春から開講する予定である。
次のセクションでは、インストラクショナルデザインのエッセンスを見ていくこととしたい。

提供:株式会社よんでんメディアワークス


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